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2023.10.5

プラスワン2023~VSイボミ

イボミ<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

スタンレーレディスホンダゴルフトーナメント 東名カントリークラブ(静岡県)

 JLPGAツアー最後の3連戦。イボミは、「カウントダウンがスタートした。きょう、プレーして改めて難しいコースだなぁ、ということを実感。コース管理がとにかく、素晴らしい。たくさんバーディーをとりたいです」と語った。

 前日、プロアマ大会の前夜祭が行われ、「スタンレーさんがセレモニーを開いてくださった。うれしくて、感動して…。外国人の私にここまでのことを」とひと息ついで、「フィギュアと大きな花をいただいた。あすから、感謝の気持ちをコースで伝えたい。ここにあるすべてを自分におさめて、試合へ臨みます」という。

 一時代を構築した不世出のスーパースターである。ツアーへ残した足跡は枚挙にいとまがない。そのひとつがプレーオフ(PO)での圧倒的な勝負強さ。PO成績は12戦9勝、勝率・750。

 VSイボミに燃えた-といえば、笠りつ子だろう。この2人のPO決戦は3試合ある。成績は笠の2勝1敗。勝ち越している唯一の選手だ。

 「ボミがいたから20代後半、私はがんばることができたと思う。とにかく、勝ちたい。負けたくない。彼女は絶対の存在でしたから…。すべてがすごい。だから、背中を必死に追いかけた」。隠れていたパワーを引き出すことができたという。

笠りつ子<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 最初のPO決戦は15年アクサレディスゴルフトーナメント。スリリングなシーンの連続だった。2ホール目まで、笠が先にバーディーを決め、イが入れ返すという展開だ。が、3ホール目はイが先にバーディートライ。しかし、惜しくも決まらない。笠は下り3メートルの難しいバーディーパットである。ところが、きれいな弧を描いたボールは右縁から鮮やかにカップインした。ここまでPO4連勝のイが初めて敗れる。

 続くPO2度目の対戦は、翌16年のニトリレディスゴルフトーナメント。偶然にも、この時、再びイがPO4連勝中だった。にもかかわらず、2ホール目で笠が2.5メートルのバーディーを決めている。優勝会見には自ら拍手をしながら入場した、喜びあふれる姿が印象に残った。

 同年の伊藤園。2人は、3度のPO対戦を行っている。ただし、三度目の正直でイがPO2ホール目で優勝。賞金女王のタイトルをグイッと引き寄せた。

 16年、笠の獲得賞金は夢の1億円を突破。「女性アスリートが日本で、年間1億円を稼ぐことなんてない。2年前から1億円の札束を携帯電話の待ち受け画面にして、大きな目標にした」そうだ。賞金女王争いにも加わり、「負かしてやろう。燃えました。そして、ボミと一緒に頑張ってツアーを盛り上げた」。

 各試合で従来とは違った現象があったことも特筆すべきだろう。「ボミの応援団がすごかった。本当に日本人からも愛されて…。今も、たくさんのギャラリーの皆さんが足を運んでくださるけど、あの時のように一極集中みたいなそんな感じではありません。ちょっと違う雰囲気でした」と振り返る。

 続けて、「印象に残っているのは、常に同じルーティンで戦っていたこと。どこで何を食べるか。バナナを食べるときが同じで、スイングやリズムがすべて同じでした。周囲をみれば、トレーナーさん、マネジャーさん、それからキャディーの清水さんがいた。個人競技であれほどの素晴らしいチームを見たことがありません。みんなが優勝へ向かって、やるべき仕事をした-私はそう思います」。

 もうひとつ、ロープの内でしかわからないエピソードもある。「ボミはとてもやさしい。皆さん、よく笑顔、笑顔…というお話をうかがうけど、試合中など勝負の時は笑ってはいなかった」。最後に、「引退は本当に残念。すごく、さびしいです。いつかは(引退の時が)やってくる。心から、第二の人生を楽しんでほしいです」。

 願わくば、もう一度、2人のプレーオフを拝見したい。秋の夜長にそんなことを考える毎日-。

(青木 政司)

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