2024.2.8
JLPGA新しいヒロイン《96期生・吉澤 柚月》
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
よしざわ・ゆづき=2003年11月23日、千葉県市川市出身
吉澤柚月にとって、お世話になった先輩ゴルファーが2人いるという。1人は目標とするプロでもある稲見萌寧。「中学2年生のときに、我孫子ゴルフ倶楽部で開催された日本女子オープンを観に行ったんです。その際にまだアマチュアだった稲見さんを見て、すごくカッコいいなと」。稲見とはそれがきっかけで仲良くなり、彼女が通う練習場で一緒にボールを打つようにもなった。吉澤がプロテスト合格時には高価なプレゼントまで贈られたほどの関係でもある。
もう一人は麗澤高校の2年先輩である西郷真央だ。「ゴルフが一度ダメになったときがあったんです。調子が悪くて何もできなかったんですが、真央さんは悩みを聞いてくれるだけじゃなく、一緒に練習をしてアドバイスをしてくれました」。ある意味、この2人がいなければ違った形の人生を歩んでいたかもしれないが、吉澤がゴルフに対して真摯な態度で向き合っていたからこその関係だろう。ジュニア時代は関東中学ゴルフ選手権を制し、伊藤園レディスでローアマを獲得するなど活躍したが、プロテストに合格するまで2度の失敗を経験した。
「1回目は論外でした。調子も悪かったので最終プロテストにも進めなかったです。2回目は最終まで進みましたが、3打足りなかったですね」。その要因はパッティングにあった。どんなにショットをピンそばにつけてもパットが入らず、スコアを縮めることができなかった。だからこそ、パットはもちろん、ショットの精度を上げて臨んだ3回目のプロテストでは、絶対に合格できる自信があったという。
「前年は自分の平均スコアが73、74ぐらいでしたが、昨年はアベレージこそ出していないものの、65や66というビッグスコアが出たり、オーバーパーをあまり打たなくなっていたことで手応えは感じていました」。課題だったパッティングは思わぬことで改善された。パターをマレットタイプからトラスパターのやや幅の広いブレードタイプに替えたところ、予想以上に打ちやすかったのだ。「ゴルフ好きの父親から勧められたものですが、たとえ入らなくても今まで使っていたマレットタイプが好きだったので、替えるつもりはなかったんですけどね」。何事も物は試しとはよく言ったものだ。パッティングに不安がなくなったこともあり、最終プロテストでは第1日に66をマーク。最終的に11位で合格のラインを越えた。
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
となれば、一気にQTファイナルステージもクリアしたいところ。緊張感と戦いながらも第3日を終えた時点で17位タイにつける。しかし、最終日はさらに緊張が高まり、体が思うように動かない。なんとか2オーバーの74に抑えたが、どこまで順位を下げたのか分からなかった。ホールアウト後、自分の順位を確認して28位と知ったときは、ホッと胸をなで下ろした。その順位なら今季のJLPGAツアーには第1回リランキングまでフル参戦できるからだ。ただ、アマチュア時代に2度のローアマ経験があるとはいえ、ルーキーが簡単に上位に行けるほど甘い世界ではない。「1試合1試合を大切にしながら、後半戦も出場できるようにリランキングの順位を上げていきたいです」と、慎重な姿勢でシーズンに臨むつもりだ。
その一方で、同世代とようやく同じ舞台で戦える喜びもある。吉澤と同じ03年度世代といえば、昨年4勝を挙げてメルセデス・ランキング5位に入った櫻井心那を筆頭に、優勝経験のある川﨑春花、神谷そら、尾関彩美悠ら6人がシード権を持つ強力世代だ。「同い年の活躍はずっと見てきましたし、すごい刺激をもらっていました」。いつかは自分も追いつきたいと心に誓っていたが、その第一歩をようやく踏み出せるのだ。シーズンオフは体力強化と技術の向上に励んでいる吉澤。リランキングの壁をクリアするためにも、開幕戦からアクセル全開で臨む。
(JLPGAオフィシャルライター・山西 英希)
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