2024.11.9
史上初の偉業に挑戦 辻梨恵『心を尽くす』
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
JLPGAツアー2024シーズン第35戦『第40回伊藤園レディスゴルフトーナメント』(賞金総額1億円、優勝賞金1,800万円)大会第2日が11月9日、千葉県長南町・グレートアイランド倶楽部(6,769ヤード/パー72)で行われた。この日はムービングデーにふさわしく、大混戦の展開に。通算10アンダーの首位に全美貞、辻梨恵、安田祐香が並んだ。1打差の通算9アンダー、4位タイは山内日菜子、穴井詩、笠りつ子。
(天候:曇り時々晴れ 気温:17.0℃ 風速:2.6m/s)
《グリーン=スティンプ:11 1/2フィート コンパクション:22mm》
心を尽くすラウンドだった。それは、この日ばかりではない。前日、そして、あすも同じである。辻梨恵の表情は実に穏やか。気がつけば、首位に立っていた。
忍耐が好スコアを運んでくる。特に印象的だったのはパー5・13番だろう。第1打を右に曲げて、第2打は目前の木がじゃまをする。PWで出すだけ-の状況。「もう、バタバタでした。それでも落ち着いていたことが良かったです。さすがに、1.5メートルのパーパットは緊張したけど…」と振り返る。
しかも、同組でプレーする安田祐香は12番から3連続バーディーを決めていた。プレッシャーのかかる場面でも、まったく動じるそぶりがない。「後半、スタートからひたすら耐える、ばかりでした。10番のパーセーブ、11番は3メートルのパーパットをカップインですから…」と、フーッと思い出しながらため息をつく。
ただし、流れを切らさないことが終盤、連続バーディーを呼び込む。15番、スライスして、フックになる超がつくほど難しい7メートルのバーディーを決めた。続く16番も6メートルのバーディーである。全身全霊のプレーは多くのギャラリーが共感したのだろう。1ホールごとに声援が大きくなっていった。
<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
今大会は主催者推薦選考会を経て、出場資格を得ている。「その時点から、私には優勝しかない。このチャンス、大事にすることだけを考えよう」と、最終日を思いやった。
シード権を失って6シーズンぶりの復帰を目指す。もっかのメルセデス・ランキングは95位。確かに一発逆転はVしかない。「秋口になって、調子が良くなってきたのは、やはりパッティングです。いいスコアでプレーしていると、カップに入れたい、と気持ちが先走っていた」と、言葉を区切り、「良かったり、悪かったりするのは気持ちというか、精神面を一定に保っていないからでしょう。だから、基本中の基本、1ストロークを大事に、を徹底。そのためにはベストの準備をすることに尽くす。気持ちが大きく変わった」と、内面の変化を強調する。
「今年の春、吉田松陰先生の心を尽くす-という言葉に感銘を受けた」。集中は当然のことのように、心まで尽くさなければ、物事を成し遂げられないからだろう。こちらまで、良い響きが耳に残る。取材をしてちょっと得をした心持ちになった。
(青木 政司)
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