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2017.4.16

final day プラスワン~熊本空港カントリークラブ 代表取締役社長 山口恭廣~

<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

KKT杯バンテリンレディスオープン 熊本空港カントリークラブ(熊本県)最終日

 居心地の良さに包まれた。上を見上げると、六角形の天井が広がる。大会最終日の喧噪がうそのように、クラブハウスのレストランは空間を変えた。熊本地震から1年。1975年にオープンした重厚で、質素なたたずまいは被害を受けることがなかった。周辺のコースは多大な損害を被ったというのに、実に不思議である。これこそ、匠の技術。世界的な建築家、アントニン・レーモンドの遺産だった。

 「古い建物でもダメージがなし。皆さん、どうして? と質問を受ける。私は自信をもって申し上げます。レーモンドさんの設計ですから」。熊本空港カントリークラブ(菊陽緑化興産株式会社)代表取締役・山口恭廣社長は説明してくれた。「丈夫な鉄骨を組んでいる。それだけなら、誰でも考えることでしょう。実は、つなぎ目に秘密がある。遊びというのか、ゆとりをもたせた。そうすることで、地震などの災害があった場合、振動からパワーを逃す作用がある。耐震構造になっているわけです。実は数年前、クラブハウスの立て直しを-という計画が持ち上がった。私は猛反対。地震の後、そのままで良かったと胸をなでおろしました」

 アントニン・レーモンド。近代建築の三大巨匠、帝国ホテル新館を設計したフランク・ライド・ロイドとともに、来日した。和の文化へ魅了され、21年には日本に事務所を設立。アメリカ大使館、フランス大使館や、東京ゴルフクラブなど、モダニズム建築の作品を発表し続けた。日本人建築家に多大な影響を与えている。

 六角形といえば、飛行機や新幹線でも知られるハニカム構造を連想させる。ハニカムとはハチの巣のこと。最も安定したパワーを発揮するもので、雪の結晶や干上がった土地のひび割れ、はたまた、昆虫の複眼など自然界にみられる。万年の寿命があるといわれる亀。亀甲紋は縁起が良いとされ、6は調和と安定をもたらす数字だ。

 とはいえ、今大会にかけるコーススタッフの熱意も大きなパワーとなった。「建物の被害はなくても、あれほどの地震があったわけですから、コースが無傷というわけにはいかなかった。15、16番は補修が必要でした。うちのグリーンキーパーは皆、自宅が益城町。自宅が大きな災害を被ったというのに、コースは大丈夫か、と休みもせずに駆け付けてくれた。有難い。みんなの力がパワーになったと胸を張って言えます」と、感慨深い様子だった山口社長。

 さらに、こんなこぼれ話があった。「地震の後、2日したら、お客さんが、ぜひ、プレーさせてください、と直接、コースを訪ねてくださった。もちろん、どうぞ、と…。ホールアウトしてから、グリーンの状態など本当に素晴らしい。ありがとうございます、とうかがった時、目頭が熱くなった」。ゴルフ王国・熊本はモダニズムと、人々の情熱に支えられている。

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