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2019.12.26

69.9399 申ジエからのメッセージ

<Photo:Masterpress/Getty images>

 クリスマス直前のことだ。カードとともに、申ジエが作成した2020年のカレンダーが届けられた。目を奪われたのはサインに添えられた『69.9399』。誇らしげで、一気呵成に記されたことが目に浮かぶ。改めて、この数字の意味を考えさせられた。

 令和元年、LPGAツアーが新たな一歩を踏み出す。1968年、獲得賞金とともに算出をスタートさせたのが平均ストロークだ。LPGAツアーの選手が挑戦し、70の壁にぶち当たる。発足52年目で初の年間ストローク60台、「69.9399」を今シーズン樹立。自身はルーキーイヤーの06年、韓国ツアーで年間平均ストローク60台をマークしている。

 LPGAアワードでは、栄誉賞で偉業を称えられた。「去年(年間公式競技3勝)に続き、栄誉賞をいただきました。本当にありがとうございます。日本のツアーの一員という気持ちがもっともっと強くなった」。感慨もひとしおの様子だ。

 LPGA会長・小林浩美は2013年から、さまざまなツアー強化策を施行する。世界と肩を並べる力を国内で養う。そのひとつの指針が年間平均ストローク60台だった。「シーズンを通して、活躍しなければ60台が出ない。まず、1人でもいいです。私は60台をマークする選手が日本のツアーから出れば、次は2人、3人と続く」。今季の開幕直前の記者会見で熱く語った。渋野日向子の全英女子オープン制覇、年間60台をマークした申のパフォーマンスは、着実に施策が実になった結果だ。

 今シーズン、申の戦歴を振り返る。27試合に出場し、86ラウンドをこなした。スコア60台=42回、70台=44回。ほぼ、2ラウンドに1度は60台をマークしたことになる。アンダーパー=57回。ベストスコアは63だ。フジサンケイレディスクラシック最終日、7打差を逆転したベストラウンドである。イーブンパー=11回。オーバーパーは18回だった。全体の約2割。年間平均ストローク60台は、かくのごとき至難の業だ。

 さて、記憶に残る1打を聞いた。「選べない。すべてのショット、パッティングが真剣でした」という。1ストロークへこだわり続けた数字の積み重ね。同時に、通訳を介さず、自身を語ることが格段に増えたシーズンでもあった。「みなさんも私の声で話を聞きたいと思ってくださっている。だから、なるべく自分で話すようにしています。でも、日本語はまだまだ。気持ちを正しく伝えるだけの力がない」と首をひねり、続けた。「みなさんと話す際は、私に責任がある。プロとして、気持ちや状況を正しくお伝えしたいです」と訴えるような眼差しに変わる。

 一方で、今シーズンは、「素晴らしい若手がたくさん出てきた。私がお役に立つようなことなら、どんどんしていきたい。日本のツアーをもっともっと強くして、盛り上げたい」と繰り返した。ライバルがいれば、自身がもっと伸びるが持論だ。それだけに、LPGAアワード当日、「きょうだけは、素直に喜びたい。しかし、あすからは真剣に来年のことを考える」と話した。

 LPGAツアーの未来を慮っているからだ。なぜなら、今季の米ツアーでは、年間平均ストローク60台を10人も輩出している。ストレートな言葉にはしなかったが、元世界ランキング1位は遠回しに伝えたかったに違いない。69.9399は、切磋琢磨のメッセージと受け取った。

(メディア管理部・中山 亜子)

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