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2020.5.30

感謝の30周年⑦~女王のステップ・アップ・ツアー 鈴木 愛㊤

<Photo:Atsushi Tomura/Getty images>

 2020年、ステップ・アップ・ツアーは30周年を迎えました。長い歴史の中で、さまざまな強化策が行われ変遷していきます。

 13年からJLPGAは、本格的なツアー強化策をスタート。19年、2度目の賞金女王へ輝いた鈴木愛は、プロ初Vがステップ。13年の最終プロテスト合格後、3戦目で本領を発揮します。時代がトッププレーヤー誕生を後押し。一方、舞台裏でも意外なエピソードが隠されていました。

 これもまた、シンデレラストーリーでしょう。人生には、ターニングポイントが必ずくる。鈴木愛の場合も、またしかり。2013年の最終プロテストで一発合格を果たす。大いなる野望を抱き、プロゴルファー人生をスタートしたわけだが、それほど実績があったわけではない。ツアーエリートとは無縁の状況でした。

 プロ1年目、当然ながら出場できるJLPGAツアーは皆無。そんな時、ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンへ推薦出場の声がかかった。通常なら、すぐにでも飛びつきたくなる。実際、本人もその気だった。ところが、母・美江さんが意外なことを口にする。

 「調子が上がってきたみたい。私はステップなら、イケそうな気がしてきた」。同週には中国新聞ちゅーピーレディースカップも開催される。はやる気持ちを抑え、再考をうながす言葉で立ち止まった。二者択一。じっくり考える。

 「いわれてみれば、その通り。アマチュアでJLPGAツアーへ8試合出場したけど、1度も予選を通過したことがない。ミヤギテレビ杯は、コースもよくわかりません。それなら、地元の香川と地形が似た中四国で、しかもアップダウンのあるコースが私には合っている」と急転、ステップ出場を決めた。名より実をとる選択。身の丈を優先する決断が、人生を好転させる。

 さらに、大会開幕前の練習で、予期せぬ人と再開。やる気が倍増したとも話した。「ジュニアのころからお世話になった、中国新聞の記者さんがいます。中国女子アマで優勝した際、記事にしてくださった。その方が、取材でお見えになり、愛ちゃんが優勝したら1面か、大きな記事にします。応援しているから-のエールは本当にうれしかった」。

 第1日、同組でプレーしたのは葭葉ルミだった。初対面の印象を、「年下でも、佇まいがすばらしい。いい雰囲気をもっている。今だから、いうわけではないけど、すごい選手になりそうな予感が漂っていた」と振り返る。鈴木は70の好スタート。最終日も、首位を快走してプロ初優勝を飾る。ちなみに、2位は最終日、猛チャージの葭葉だ。

 「必死にプレーしていたから、優勝だなんて、とても思えなかった。ひょっとしたら-と感じたのは、難度が高いパー3の16番でバーディーをとれた時かなぁ。でも、経験がなかったからとにかく、ホールアウトするまで無我夢中。大会翌日、中国新聞さんが大きく取り上げてくださったし、テレビ解説で岡本(綾子)さんの根性がある-のひとことが以降の、励みになりました」と、口調に熱を帯びる。プロ初優勝の後日譚、実に興味深かった。

=つづく


【鈴木愛 ステップ・アップ・ツアー戦歴】

取材、データ構成=メディア管理部・中山 亜子、鈴木 孝之、宮崎 善秀

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