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2022.5.15

超攻撃スタイル 渡辺彩香-15メートルV

<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 JLPGAツアー2022シーズン第11戦『ほけんの窓口レディース』(賞金総額1億2000万円、優勝賞金2160万円)大会最終日が5月15日、福岡県福岡市・福岡カンツリー倶楽部 和白コース(6299ヤード/パー72)で行われ、渡邉彩香が大会新記録の通算11アンダーで優勝した。勝負は大会通算5回目(前身のヴァーナルレディースを含む)、21年に続くプレーオフへ。PO2ホール目で渡邉がバーディーを奪い、高橋彩華との大接戦をものにした。ツアー通算5勝目。通算9アンダー、3位タイは稲見萌寧、小祝さくら。
(天候:曇り 気温:18.9℃ 風速:2.3m/s)
《グリーン=スティンプ:10 1/2フィート コンパクション:22.5mm》

 彩vs彩。プレーオフ2ホール目で、勝負が決まった。それにしても、渡邉彩香のバーディー奪取は強烈。2段グリーンの下から、のぼりのスライスである。「ワングリップ以上、切れる、と読んだ」という。しかも、距離は15メートルあった。

 「パッティングのラインと、ストロークの加減が完ぺき」と、タイコ判を押した一打はカップへ向かう。そして、ボールが転がり込んだ。大きな、大きなガッツポーズが力強く、美しい。ツアー通算5勝目は、超復活V達成から2年が過ぎていた。

 しかも、土壇場で大逆転。PO2ホール目は明らかに、高橋が優勢だった。第1打、第2打も渡邉はラフへ。さらに、木の後ろから110ヤードの第3打をグリーンへ乗せたものの、勝負の流れを引き寄せたわけではなかった。

 ただし、涼しい表情でピンチをしのいできたのは、「ラフからのショットは慣れている」。経験を積み重ねた自信だった。首位で迎えた最終日、最終組。スタートホールで、早くもきょう一番の第1打を放った。「本当に打ちにくいホール。右がOBで、左からは風が吹いている。難しい状況だったけど思い切りよくいけた」とバーディー発進。

 こうなると、勢いはさらに加速する。序盤の5ホールで4バーディー。独走を予感させた。ところが、8番・第1打でOBを叩く。「明らかにミスショットです。しかし、気持ちが乱れたなど、内面の不安はまったくなかったです。最初、4つのバーディーをとったけど、私だからわからない-と思っていた」と、苦笑いを浮かべる。

 そして、「OBを打っても、その後に2バーディーをとればイーブンになる。守りのプレーはできませんから…」。淡々と振り返った。

 ただし、信念は最後までブレなくても勝負はひとりで行うものではない。17番で3パットのミスが出て、6バーディー、3ボギー、1ダブルボギーの71。18ホールの決着とはいかなかったのである。

 プレーオフへ突入しても、いつにもまして心は澄んでいた。「バーディー、イーグルをとればいい」。自身の可能性を信じ続けた。前週、公式競技にかかわらず、よもやの予選落ち。さすがに落ち込んで、家庭ではご法度である、仕事の悩みを夫の柔道家・小林悠輔さんへ打ち明けた。

 「今年は開幕戦から好調で優勝争いをしているけど、結果がもどかしい-とめずらしくグチをこぼして…。そうしたら主人が、悩むことができるなんてうらやましい。(同じアスリートの)おれからすれば、上を目指すことは、悩むことだと思う。そういうアスリートって幸せだよなぁ、と話してくれた」と明かしている。


<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 この日、コースでは小林さんが静かに激戦を見守り続けた。「目の前で優勝をしたことがない。勝つところを見せたかった」との夢をかなえる。そして、もうひとつ。「原さん、小祝さんと同組でギャラリーがたくさん。ギャラリーの皆さんの前で久しぶりに優勝することも今年の目標のひとつでした。また、ボランティアの皆さんのご協力にも感謝を申し上げます。ギャラリーの皆さん、ボランティアの皆さん、本当にありがとうございました」と伝えた。

 あきらめない。燃え尽きない。可能性は無限大。デビューから、クローズアップされたのは飛距離だけではない。オールラウンダーの大器である。振り返れば、リオデジャネイロオリンピック日本代表へ、あと一歩と迫った。が、及ばず。スランプへ陥った。勝負の怖さを経験している。

 今季はプロ11年目。「もう、ベテランかなぁ」といいながら、「たくさん、いい試合をしたい。JLPGAツアーで頑張っている以上、1番になりたいです」と語る。彩は美、いろどりを表す。

 色あせない、伝説のひとつになりそうな15メートルの奇跡を生んだ。15年、8月15日にはツアー史上2人目のアルバトロスとイーグルを同日達成。さて、次はどんな優勝、スーパープレーを披露するのか。

(JLPGAオフィシャルライター・宮脇 廣久)

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