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2023.9.17

2勝目の呪縛から解放された岩井明愛「OBを打っても大丈夫と思えました」

<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 JLPGAツアー2023シーズン第28戦『第54回住友生命Vitalityレディス 東海クラシック』(賞金総額1億円、優勝賞金1,800万円)大会最終日が9月17日、愛知県美浜町・新南愛知カントリークラブ美浜コース(6,534ヤード/パー72)で行われ、岩井明愛が1打差で逃げ切り、通算15アンダーで今季2勝目を飾った。通算14アンダー、2位は小祝さくら。通算12アンダー、3位タイで西村優菜、笠りつ子、西郷真央、イミニョンが入った。前回大会優勝の尾関彩美悠は通算11アンダー、6位タイで3日間を終えた。
(天候:晴れ 気温:31.1℃ 風速:3.5m/s)
《グリーン=スティンプ:10 1/4フィート コンパクション:22mm》

 呪縛から解放された。岩井明愛は最終18番で10センチのウイニングパットを決めた瞬間、天を仰ぎながら両拳を突き上げ、その後あふれ出てきた涙を隠そうと、あわててキャップのつばを押し下げた。今年4月のKKT杯バンテリンレディスでJLPGAツアー初優勝を成し遂げて以来、154日ぶりに栄冠をつかんだが、この半年足らずがとてつもなく長く感じられた。

 「あと少しというところで負けてしまっていましたから」。初優勝後、3度のプレーオフ敗退を含めて2位が5度。「不安との戦いでした。2勝目はもう挙げられないのではないかとも思っていました」と明かす。2位に3打差をつけて迎えたこの日も、応援に来てくれた知人に「期待しないで」と漏らしたほど、不安が時おり頭をもたげた。

 しかし、惜敗を続けたからこその成長もある。2位に4打差をつけて迎えた14番パー4で、まさかのダブルボギー。前日もここでダブルボギーを叩いており、まさに鬼門だ。まずティーショットが右のバンカーにはまり、ピンまで106ヤードのバンカーショットをPWで打つと、グリーンを突き抜け、なんとOB。腰が抜けそうな痛恨のミスショットだったが、岩井は「今日は正直言って、やっちゃったという気持ちはありませんでした。OBを打ってもたぶん大丈夫、なんとかなると思えたんです。以前の自分とは違いました」と述懐する。

 悔しすぎる敗戦を何度も経験し「最終日最終組で回っていれば、ミスショットは絶対にありますし、トラブルは付き物。私のゴルフはそうなのです。それを知っているから、心を広くして戦えました」と肝が据わっていた。自分の未熟さを知る者は賢い-と言われるのは本当だ。

 4打目となった打ち直しのバンカーショットは、短くフェアウェイに出しただけ。5打目のアプローチもピンまで約4メートルを残した。手が震えてもおかしくないダブルボギーパットだったが、岩井本人は「下りのスライスライン。今日はパッティングで比較的ラインが見えていたので、大丈夫だろうと思えました」と言い切る。実際にこれを決め、一息ついた。

 この後、1組前を行く小祝さくらに並ばれる時間帯もあったが、191ヤードの16番パー3のティーショットを、5Uでピンそば約10センチにピタリ。バーディーを決めて小祝を突き放し、優勝を引き寄せた。

 「優勝を意識すると、体が思うように動かなくなる」という経験から、今大会中は「優勝」の2文字を思い浮かべないように努めていた。実際に2度目の優勝を果たしてみれば、今季メルセデンス・ランキングでも、トップの申ジエに262.40ポイント差の3位。4日間競技で1度優勝すればひっくり返る可能性のある僅差だ。「(年間女王は)今まで考えたこともありませんが、いずれは狙いたいです。これからは(メルセデス・ランキングの)目標を立てようかな」と少し欲も出てきたようだ。

 ならば、次週からは明確に優勝を目標に置いて戦うのかと聞くと、「まだ狙って取りにいくと危ないです。今日みたいな感じで、自分に期待しないで臨みたいと思います」と笑った。21歳の若者は、自分の実力や精神状態を冷静に見極めようと努めている最中だ。

(JLPGAオフィシャルライター・宮脇 廣久)


<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

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