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2023.9.27

史上初のグランドスラムへ向け、秘かに立てた申ジエの作戦とは

<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

日本女子オープンゴルフ選手権 芦原ゴルフクラブ 海コース(福井県)

 申ジエにとって昨年の今大会は悔しさが残る1戦だった。開催コースとなった紫カントリークラブ・すみれコースはかなりの難しいコースセッティングに仕上げられていたこともあり、どの選手もスコアメイクに四苦八苦することに。4日間でアンダーパーをマークできたのはわずかに2人しかいなかった。そんな状況で申は通算2アンダーで回ったものの、勝みなみにわずか1打及ばなかった。

 当然、今年はその悔しさを晴らすことしか頭にない。「今年は去年よりもいいスコアが出ると思います。おそらく毎日60台を出さなければ優勝できないでしょう」とハイスコアになることを予想する。大会を主催する日本ゴルフ協会によれば、コースレーティングは昨年よりも高い79.9となっている。開催コースの芦原ゴルフクラブ海コースはその名のとおり、日本海に面しており、この5年間で約7,000本の松を伐採し、海からの風をさらに受けるようになったこと、小さなグリーン、長いラフが、レーティングの数字を上げた要因だ。

 しかし、申はそれほど難しさを感じていないという。「確かに風が吹くと弾道の高さを調整しなければならず、難度は上がると思います。しかし、風が強く吹かなければそれほど問題にはなりません。小さなグリーンもグリーン面自体が見える状態であれば、プレッシャーを感じることもないでしょう」。むしろ、厄介に感じるのはアップダウンがあるアウトコースをどう攻めるかだ。「いきなりアウトスタートだと体に負担もかかるし、フェアウェイからでもグリーン面が見えないホールが多いので、距離のコントロールが難しくなります」。ピン位置にもよるが、アウトコースでは確実にグリーンの真ん中を狙い、チャンスを伺いつつ、グリーン面が見えるインコースに入ってからチャージをかける作戦だ。

 「幸い、第1日はインコースからスタートするので、できれば前半でスコアをしっかりと伸ばし、第2日以降につなげたいですね」とVロードへの青写真を描く。

 これまで公式競技では4勝を飾っている申。公式競技4大会で唯一優勝していないのが今大会であり、仮に制するとJLPGAツアー史上初のグランドスラマーとなる。しかも、通算29勝目となり、念願の永久シード獲得へリーチを掛ける。また、現在メルセデス・ランキング1位の申だが、2位の山下美夢有だけでなく、3位の岩井明愛も2週連続優勝を飾って肉薄しているだけに、年間女王の座を確固たるものにするためにも勝ちたいところだ。

 「ナショナルオープンということで試合の雰囲気もいつもと違いますし、歴史の重さも感じます」と気合も入る。今大会には過去11回出場し、2位が2回、3位が1回、その他のトップテン入りが3回と相性はいい。今季は全米女子オープンでは2位タイ、全英女子オープンでは3位と海外のナショナルオープンでも好結果を残している申。あとはティーオフを待つだけだ。

(JLPGAオフィシャルライター・山西 英希)

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