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2024.1.10

JLPGA新しいヒロイン《96期生・清本 美波》

<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

きよもと・みなみ=2005年8月29日、愛知県一宮市出身

 美波という名前は、父親である宗健氏がサーフィンをさせたかったことに由来するが、父の願いは叶わず、波よりも芝に興味を持ったという。6歳でクラブを握ると、小学生の頃には当然のように将来はツアープロとなり、賞金女王の座にもつけるものだと信じ切っていた。ところが、中3ぐらいから同学年の選手が次々と台頭し始め、高校入学後は団体戦で全国大会に出場するものの、個人戦ではそれほど目立つ存在ではなかった。いつしかプロになることを難しいとさえ感じるようになっていた。

 プロテストを1年後に控えても調子は上がらず、中部ジュニアに優勝するが、日本女子アマや日本女子オープンでは予選通過すらできなかった。それでも、最終プロテストまで駒を進めると、周囲のスコアや順位を気にせず、とにかく自分のゴルフに集中した。その結果、4日間で17アンダーというハイスコアを叩き出す。土壇場で底力を発揮するあたり、ツアープロに必要な『何か』を持っているのかもしれない。

 トップ合格した途端、一気に注目を浴びる。身長153センチの高校3年生が、22年の全米女子アマを制した馬場咲希やツアーでの実績もある髙木優奈らを抑えてトップ合格を果たしたのだから、多くのメディアに取り上げられるのも自然な流れだった。彼女自身もテストを終えた時点では「すごく嬉しいです」と笑顔を見せていたし、4日間の激闘にプレッシャーを感じるよりも、「楽しむことができました」と振り返っていた。

 ところが、試練はQTファイナルステージで待ち受けていた。できれば勢いに乗って翌年のツアー出場権を獲得したいところだったが、19オーバーの100位に終わる。「正直、周りを気にし過ぎました。プロテストと違い、ベテランの方もいらっしゃるので、迷惑を掛けてはいけないと気を遣ってしまい…」。先輩プロに気を遣うこと自体は悪くないが、それで自分のプレーをできなければ本末転倒である。トーナメントに出れば、年齢やキャリアは関係ない弱肉強食の世界であり、勝ち残るには他人を蹴落とすぐらいの気持ちが必要となる。その意味では、早い時期に貴重な経験をできたと言えるだろう。


<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 24年はステップアップツアーが主戦場となるが、翌年の前半戦出場権を得られる賞金ランキング2位以内に入ることが目標だ。そのためには、メンタル強化だけでなく、平均230ヤードだったドライバーの平均飛距離を少しでも伸ばすことが課題となる。

 「飛距離が伸びても曲がっては意味がないので、下半身と体幹を鍛えるトレーニングをしっかり行い、ベースとなる筋力アップに励むつもりです」と、このオフはパワーアップにも余念がない。山下美夢有を筆頭に、身長150センチ台でも上位に来る選手は例外なく筋力トレーニングを欠かさない。長いシーズンを乗り越える体力もそうだが、少しでも飛距離を伸ばすには、やはりトレーニングは必須だろう。

 ただ、清本には大きな武器がある。ゴルファーには欠かせないリズム感を持っていることだ。「3歳ぐらいから3年ほどヒップホップダンスを週1で習っていました。父がダンスも職業にできると思っていたからです」。ゴルフを始めると同時に辞めてしまい、宗健氏の計画はまたしても水泡に帰したが、ゴルフの上達にプラスになっていることは間違いない。2年連続年間女王の山下はスイングリズムが大切だと常に語っているだけに、今後もリズム感は清本のゴルフを支える大きな力となるはずだ。

 将来的にはタイガー・ウッズのようなオーラのある選手になりたいという夢を持つ清本。19年に東京・原宿で行われたトークイベントで生ウッズを観たときの感動は今でも忘れない。「そのときに『もっと強くなりたい』と語っていたのが衝撃でした」。憧れの人と同じように常に上を目指す気持ちを失わなければ、自然と道は開けるはずだ。

(JLPGAオフィシャルライター・山西 英希)

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