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2017.6.24

3rd day プラスワン~藤田観光株式会社 名誉総料理長 村田眞吾~

<Photo:Masterpress/Getty Images>

アース・モンダミンカップ カメリアヒルズカントリークラブ(千葉県)3日目

 クラブハウスで拝見する、トック・ブランシュはひと際、異彩を放っていた。トーナメントでフレンチのフルコースを味わう。極上のぜいたくだ。それも、伝説のシェフの技とセンス、そして人生までが凝縮されている。肩書は、藤田観光株式会社・名誉総料理長。

 「数年前、3月のことでした。春の料理を指導するため、コースへ来たら、アースさんのトーナメントスタッフが、雑草取りをしている。ゴルフ場のスタッフなら当然だけど、年に1度のトーナメント開催のため、これほどの情熱を傾けてくださる、と感じました。調理やサービスする側も、それこそ生死をともにする覚悟で取り組む。身が引き締まった」と振り返った。サービスを提供されるのは、ダイヤモンドボックスの名前がついた、特別観覧席の入場者だけだ。

 村田眞吾さんが、半年前からメニューを考え、試行錯誤を繰り返した逸品揃い。「私は、千葉県富津市で生まれた。地元の材料にこだわり、大会の4日間だけのために、つくりました。お客さまは年配の方が多いと予想。歯のお悪い方、生活習慣の持病などをお持ちの方もいらっしゃることまで、想定したのです。でも、勘違いしないでください。料理はお若い方などにも、きっと満足していただける、と自負している」。

 メイン料理は、子羊のフィレ花飾り仕立て ソースマンゲットだ。「これは、地元産とはいかない。取り寄せた。ただ、生後2週間の厳選素材。かなり珍しい」と説明した。さりげなく、添えられたエーデルワイスまで、隙がない。皿の中に宇宙があるが如く。そうはいっても、「私の役割は終わりました。今、お客さまの反応を片隅から、拝見している。もう、来年はどうしようかと考えています」。

 入社して54年が経つ。料理人ひと筋。わき目も振らずの人生だ。「男の道楽といわれる、飲む、打つ、買うには一切、無縁。入社する際、当時の料理長から、念を押されて、誓約書を書きました。『嫁さんは俺が世話をする。結婚し、嫁さんになった人と恋愛をしなさい』とか…。ひとつとして約束を破ったことがない」と、大まじめに語る。なるほど、その通りの人だ。料理ひと筋。1983年世界料理コンクール世界大会の金賞や、現代の名工など、数々の受賞歴は、そのたたずまいを見ただけで、一目瞭然だろう。

 「賞は、あくまで結果。欲しいと思ったわけではない。仕事をしていたら、そうなった。会社でも、同期で入った仲間と比較すれば、私は昇格がとても遅い。料理は懸命にやりますけど、人事管理とか、事務作業が好きではなかったからです。お客さまにおいしいといってくだされば、それが何よりもうれしい。まぁ、そんな古い考えですから、便利でも、パソコンなどもさわりませんね」という。

 料理を見た瞬間、ハッと息を飲むような演出はしない。「現代は、器で料理をみせる手もある。四角もあれば、縁が鋭角になっていたりでね。しかし、それでは食べやすくない。皿はすべて円です。もし、食事中、険悪になって皿を投げつけられても、丸ならば、ケガをしなくてしないですむ。そういうことも考えました」。

 趣味のゴルフを始めたのは、45歳。当時の料理長から、「ゴルフを通じて、人脈を広げたらいい」とすすめられた。「ヘタだけど、楽しい。趣味はこうでなくてはいけません。私は、第1回のアース・モンダミンカップを勝った、服部真夕さんのファン。生まれて初めてサインをもらったプロです」。

 近代フランス料理の父、オーギュスト・エスコフィエのエスプリをそのままに。フランス語で白い帽子の意味がある、トック・ブランシュの中には、おもてなしの精神がつまっていた。

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