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2020.7.18

原江里菜-激動の時代でみつけたニュースタイル

<Photo:Atsushi Tomura/Getty images>

 新型コロナウイルス感染症の影響でスケジュールが流動的だった、2020-21年JLPGAツアー第2戦がNEC軽井沢72ゴルフトーナメントに決定した。毎年、熱戦が展開される今大会で、忘れられないシーンがある。16年、NEC所属の原江里菜がプロアマ大会で体調不良を訴え、棄権。直行した病院で虫垂炎の診断だった。

 ところが、薬で痛みを散らしながら意地をみせる。早朝、病院で点滴を打ち、コースへ直行という強行軍にもかかわらず第2日、40人抜きで予選通過を果たした。プロフェッショナルとは何か-。最終日を終わり、「こういう状況になったのは、準備不足ということでしょう。反省をしなくてはいけません」の言葉が印象に残った。08年の歴代チャンピオン。ホステスプロの矜持を取材した。

――第2戦が所属する大会へ決定した。
 「周囲の反響がとにかくすごい。たくさんの方から連絡をいただきました。当然、コロナ禍で大変な状況にもかかわらず、試合を開催してくださって、心から感謝しています。私をサポートしてくださる皆さんをとても誇らしく思います。大会は、ギリギリまで開催の判断を迷ったとうかがいました。選手にとって、試合があるのは大きなモチベーション。一日一日、丁寧に過ごせます。ありがとうございます」

――大会へ向け、どのような準備を行うか。
 「制約が多い日常で、練習など実践的なことはなかなかできません。でも、自分のペースで毎日練習をしている。第1戦へ出場し、練習では見つけることができない課題や、緊張感のある中で、どういうミスがでるかがわかった。課題をしっかり修正していきたい」

――具体的に。
 「ここ数年、パッティングの不調で悩みが多い。思うようなストロークができません。ロングパット、ショートパットも同様です。ゴルフはミスのスポーツだと思っている。自分で決断した結果ですから、次のプレーへ向け、歩いているときなどに消化するようにしてきた。しかし、できないことに対しては、なぜ? なぜ? なぜ? と考えこんでしまう。ただ、アース・モンダミンカップで克服の兆しが見えた。パッティングに自信が戻ってきたと感じる。今回はストレスがなく、試合へ臨むことができそう。楽しみです」

――自信をもってホステス大会を迎えられますね。
 「そんなことはありません。不安だらけ。むしろ、不安があるから、もっと練習しようと思っている」

――一方で、クラブ契約がフリーに。
 「こだわりはなかった。今まで契約先から、これがいい、と勧められたもの。自分の感覚が良いものを使用していました。(フリーになって)いろいろな方からクラブについて話をうかがい、私のスイングにこのクラブが合う、などと気がつかないこと、提案などをたくさんもらって、勉強になっています。知らなかったことを、知ることができた。というわけで、もっとああしたい、こうしたいなど、試行錯誤の繰り返し。とても新鮮な気持ちです」
 「これまでは、クラブをつくってもらうことが当たり前だった。何不自由のないシーズンを送っていたと思います。しかし、プロでもクラブを支給ではなく、購入する選手もいる。みんなが恵まれているわけではありません。ただ、私はサポートしてくださる人がたくさんいた。昨年、ファイナルQTの結果がいまひとつで、毎週のように試合へ出場する選手とは扱いが違うのは当然でしょう。にもかかわらず、親身になってくださる方がいて、まだゴルフをがんばっていいんだ-と思えた。試合も同じです。あるのが当たり前でした。それだけに、コロナ騒動で、試合を開催してくださることのありがたさを身に染みています」

――中止期間が続いたが。
 「プロになって13年。こんなに、ゆっくりしたことはなかった。いいのか、悪いのかはわからないけど、家族に連絡することが増えた。会えなかったけど、たくさん話をしましたね。従来のシーズンでは、ゴルフにプラスになることを最優先。極端にいえば、プロになってから休むことは悪いことだと思っていた。練習=仕事が生活。だけど、それができない。国民の一人として、自宅で自粛している時、いろいろなことを考えた。そんなことがいい方へ向かうといいなぁと思っています」

――アースは無観客、ネット中継など新しい形のトーナメントだったが。
 「異色でした。プロである以上、プレーをみてもらいたい。無観客は残念です。でも、YouTubeでの放映は斬新。私自身、自分のプレーを後で見ることができた。新しい形です。ただ、これがスタンダードか、と言われると、そうでもない。ギャラリーの皆さんの前でプレーしたい。インターネット放送も、もちろんいいけど、ゴルフが大好きなおじいちゃん、おばあちゃんからどうやって視聴するのかわからない、という問い合わせがあったことをうかがった。私は、ひとりでも多くの人にプレーをみてもらいたいです」

――ご自身の人生哲学のようなものはありますか。
 「私にかかわってくれた人を必ず幸せにする。いつも胸に秘めています。応援してくださる方が、がんばろうという気持ちになってほしい。応援してよかったと心から思っていただきたい。振り返ると、若い頃は考えが甘かったかもしれません。自分が一番。がんばっているから、スポンサーがついて当然だと思ったこともあります。しかし、スポンサーの立場で考えれば、株主さんを含め、どうして応援するかを示さなければいけません。だから、期待を裏切れない。責任感があります」
 「今回(コロナ)のことは、世の中も私たちもマイナスの出来事に映る。でも、それがすべてダメだとなるのは、私の行動すべてにかかっている。ゴルフが上向きになれば、良い記憶に変えられます。そうなるように自分のステージを上げたい」

――ファンへメッセージを。
 「試合があるのは、選手にとってもうれしいことです。日常があってのスポーツ。だから、みてくださる方々の心を動かしたい。私もがんばろうと思ってもらえるように、です。人生とまではいかなくても、感動、刺激の一助となりたい。大会では、みなさまが観戦してくださっていることを忘れずに、精いっぱいがんばります」

(メディア管理部・中山 亜子)

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