春を待つ94期生～佐藤 心結

＜Photo：Atsushi Tomura/Getty Images＞

　コロナ禍の難しい調整を克服。2023年、プロ2年目のスタートを切る。21年11月、29.2倍という、狭き門を潜り抜けた94期生は逸材揃い－との評判が高い。

　さとう・みゆ＝2003年7月21日、神奈川県小田原市出身

　やまとなでしこ－のたたずまい。態度や表情が穏やかでゴルフウェアを着ていなければ、職業がプロゴルファーとは想像がつかないだろう。

　年齢に似合わない技術をもっているが、取材していると内面の強さが見え隠れする。とはいえ、最初に口にしたことは、ルーキーシーズンを終えた感謝の言葉。

　「プロになって良かった。そう感じたのは練習場で、芝から打てる喜びでした。高校までのアマチュア時は、コースへ行かなければ環境が整わない。それがプロのツアーでは、芝からショット練習ができる。アプローチもできる。幸せです。素晴らしい環境を与えてくださった皆さまへ毎試合、感謝をしながら戦いました」。

　遠くを見るような目をしながら一度、話を切る。続けて、「アマチュアの時、練習場でマットの上からショットを行いますけど、ミスをしても結果オーライになることが結構、ある。でも、トーナメントの練習場ではミスはミス、ということがはっきり出てしまう。ラウンドをしている感じでショットが打てる。これなら、技術が上がります」と、違いを解説した。

＜Photo：Atsushi Tomura/Getty Images＞

　スポットを浴びたのは高校3年、JLPGAツアー初出場を果たした21年のスタンレーレディス。渋野日向子、木村彩子、ペソンウとのサドンデス方式のプレーオフを争った。PO2ホール目、結果は渋野に敗れたものの、思い切りの良さ、攻めの姿勢が明るい未来のプロローグになる－と強烈なインパクトを残している。

　当然のように21年最終プロテストで一発合格を果たし、22年はJLPGAツアーへ活躍の場を移す。「去年の目標は優勝、そしてシード権獲得でした。JLPGAチャンピオンシップリコーカップは残念ながら、体調不良で出場が叶わなかったけど、出場権を獲得できた順位で終われたことがうれしい。プロ1年目ですから、良かったとは思います」と及第点を与えた。

　そうはいっても、優勝へ手が届かなかったことについて、「トッププロの皆さんは、試合へ出場する際、当然のように勝つつもりでいますね。傍から拝見しても、そんな闘志が伝わってきます。もちろん、私も目標を優勝と掲げた以上、そのつもりでしたけど…」といい、「シーズン中盤にさしかかって、優勝という言葉、気持ちが私から消えてしまった時がありました。何をしたくて試合へ出ているのか。まったくわかりません。もう、次から次へと悩むことばかりだった」。

＜Photo：Atsushi Tomura/Getty Images＞

　4月の富士フィルム・スタジオアリス女子オープンから7戦連続の予選落ちを喫する。「これではいけない。もがいて苦しんだ。しかし、どんなに調子が悪い時でも、必ずいいこともある。気持ちを整理して、良いシーンを思い出し、次へ進んだら気持ちがポジティブになれるようになりました。おかげで、5月のリゾートトラストレディスで久々に予選通過を果たすと、そこから10戦連続予選通過。メンタルって大事です。今年の課題にもしている。失敗をメンタルのせいにすることは簡単ですけど、敗因にはしたくはありません」と力を込めた。

　経験を糧に今オフは心技体を整えている。それにしても、まだ19歳。わかりやすく、卓越した伝えるトーク力がすごい。いったい、どう培ったのだろうか。　

　「そんなことはありません」と恐縮しながら、「KGA(関東ゴルフ連盟)ジュニアへお世話になっていたからでしょう。吉田優利プロも卒業生です。そこではコミュニケーションのスキルアップ研修会があり、人前でスピーチ、電話の応対などを、いろいろと経験しました。訓練したことが役に立っているのかなぁ」と、控えめに漏らした。

　今季、プロ2年目のシーズンを控え、躍進が期待されている。プレー同様、来るべき初VのXデーで何を語るかも興味津々。

　「感謝の言葉は、自然に出てくるものです。そうでなければいけない、と思う。いわなければならない。入れなければならない。そんなことを先に考えているようでは、ちょっと…。事前に用意するような、原稿読みはいけません。自然体で感じたことを伝えます」

　感謝で始まり、感謝で締めくくったインタビューだった。さすが－大器は違う。