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2023.11.11

鈴木愛-伊藤園スペシャルで急上昇

<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

第39回伊藤園レディスゴルフトーナメント グレートアイランド倶楽部(千葉県)第2日

 鈴木愛の体調はいまひとつだった。それでも、65をマーク。2位タイへ順位をあげている。「今回を含め、残り3試合。でも私は、北海道meijiカップだけしか勝っていない」。心中で燃えているのは、1勝で終わりたくはない-という闘争心だ。

 15番からの3連続バーディーは見事の一語だが、この日、もっとも印象に残るシーンは11番のバーディートライ。距離は10メートルあった。この時、同距離の逆方向からジッとラインを読んでいる。通常は逆方向からラインを見ても5メートルが最大だ。「試合に出始めたころ、この大会で、ハウスキャディーさんにお願いすると、グリーンは目に見えないような細かい傾斜がたくさんある、とアドバイスを受けた。本当に、本当にラインを読むことが難しい」。ちなみ、1カップ切れるスライスラインである。あっさりとボールはカップへ吸い込まれた。伊藤園スペシャルともいえる、読みは確かだ。体調のマイナスは培った経験と、天性の素質で補った。

 以前から、口にしているのは、「10メートル以内なら、バーディーチャンス」である。しかも、今回は同距離からラインを読むルーティンを加えた。最善をつくしているだけに、「思ったところへストロークして、たとえ入らなくても、私のせいではない」と割り切っている。一方で、「体がちょっとだるいから、何も考えるゆとりがなかった。どうせ、決まらないだろう、と思っていたら、いつの間にバーディーがたくさん…」と苦笑した。やってみなければわからないものだ。だから、ゴルフはおもしろい。


<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 19年の大会を制した。「あの時だって、まったく優勝のイメージはなし。優勝した時、奇跡だと思ったぐらい。シーズンの中で、トップ3へ入るぐらい、ラインの読みが難しい。その気持ちはまったく変わりませんね」と真顔で話した。

 一方で、優勝を飾れば、生涯獲得賞金が9億円を突破することも、奮い立つ要因になっている。「最終プロテストへ合格した時、永久シード獲得が目標とはお話をしたけど、もうひとつ絶対に10億円は稼ぐ-決めていた」。9億円という、ひとつの区切りが見えた。となれば、力もわいてくる。

 感服したのは、体調がすぐれなかったものの、ファンの求めに応え、ペンを走らせたことだろう。「私のサインで喜んでくださればうれしい」。最終日を前に、声援をパワーに変えるためだ。

(青木 政司)

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