兵庫から全国へ　笠りつ子の技術力と発信力

＜Photo：Atsushi Tomura/Getty Images＞

　2016年LPGAツアー第32戦『NOBUTA GROUP マスターズGCレディース』(賞金総額14,000万円、優勝賞金2,520万円)が10月20日、兵庫県三木市・マスターズゴルフ倶楽部(6,523ヤード/パー72)で開幕した。大会1日目、67の好スコアをマークし、5アンダーで首位スタートを決めたのは笠りつ子。1打差の4アンダーで鈴木愛、全美貞、上田桃子が続く。ホステスプロのイボミは、イーブンパー、38位タイと出遅れた。(天候:晴れ　気温:24.4度　風速:3.5m/s)

　あわや、漫画みたいなゴルフが現実に－。笠 りつ子の13番、第2打はピンへ向けて一直線に飛んでいく。それもフラッグを目指して。その瞬間、ギャラリーの脳裏を過ったのは、『旗つつみ』だったのではなかったか。藤子不二雄Aの傑作漫画『プロゴルファー猿』の離れ業である。

　ボールをなびいているフラッグに当て、そのままカップインする。連載中、最も多く登場したテクニックだ。しかし、残念。ボールはピンを直撃し、手前3メートルに転がった。ただ、もっかの好調を示すように、きっちりとバーディーを決めている。「残念だったけど、仕方がない」と話した。そして、この日のプレーを、「グリーンが柔らかいので攻めていけた。欲をいえば切りがないけど、もっとスコアを伸ばせそうな感じ…。最後の9番が3パットのボギーだったし、デキとしては60点ぐらいだと思う」と厳しい自己採点を。

　ただ、勝負は4日間の長丁場だ。というわけで、「まだ1日目でしたね。少しずつ上げていきたい。もっと安定したゴルフができないとダメですね。私以上に、今大会を勝ちたい、と思っている選手がたくさんいるはずだし、とにかく2日目以降は、自分のゴルフにより徹するようにします」と、これまで以上に気を引き締めている。

　もっか賞金ランキングは3位。賞金女王を狙えるポジションにある。当然ながら、露出も増加。ゴルフ雑誌の表紙を飾り、部数も上がったと耳打ちされれば、悪い気はしない。そうはいっても、笠があの手この手で、話題を提供しているのは、ファンに対するメッセージだった。「スポンサーはもちろんだけど、ファンの皆さんがあっての私です。コースで観戦してくださるファンはありがたい。だけど、お仕事や遠方ということで、来られない方もいらっしゃる。そうした方のために、私は元気でプレーしています。ありがとうございます、という気持ちが、いろいろな記事から伝わってくれたらと思っているのですよ」。

　アグレッシブなスタイルと、大和なでしこの心を忘れないことが身上だ。ちなみに、なでしこは秋の七草のひとつ。花言葉を調べてみると、大胆、才能など笠を表すような言葉がみつかった。