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2017.11.26

居残りの愛 2冠を引き寄せた運命の5メートル

<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ 宮崎カントリークラブ(宮崎県)最終日

 国旗を意識した赤のシャツ、白のパンツ。鈴木愛は日本を誰よりも愛していた。最終18番、シーズン納めのパッティングは5メートルのパーセーブ。最後までハラハラドキドキのシーンだった。「最後は、何としてもパーで終わりたい。もし、締めがボギーだったら、ずっとモヤモヤが晴れない。逆目のラインだし、強気に行った。でも、すごく強すぎて、ビックリ」。この、ドラマチックすぎるパッティングが、タイトルを引き寄せたとは本人も予想していなかった。

 その時点で賞金女王は確定。ところが、メルセデス最優秀選手賞は決定していない。後半2イーグルの離れ業で、猛追したキムハヌルが仮定ながら、首位。結果は鈴木がパー、キムがボギーとして、順位を下げる。わずか、1ポイント差で鈴木が2冠に輝いたのだ。これほどの大接戦は、かつてなかった。土壇場の底力は、「練習の賜物だったかもしれません」とほほ笑む。

 日本人選手が賞金女王に輝いたのは2013年以来、4年ぶり。メルセデス最優秀選手賞も同様だ。「日本で開催しているツアー。もっと、日本人が頑張らないといけない、といつも危機感を抱いていた。ギャラリーさんから、日本人頑張れ、と声が飛んできます。正直なところをいえば、みんな頑張っています、と感じるけど、やっぱり成績がモノをいう世界。私の場合は、練習量では外国人選手に負けないように、と誓った」。とはいえ、今年前半は、ヒザ痛など体調面が万全ではない。「思い切り、練習をするようになったのは、9月下旬ぐらいからでした」。

 練習量は少しセーブしたといっても、他の選手以上。それが秋を迎え、より一層、熱心になった。雨や強風でも休むことはない。日没後、パッティンググリーンで黙々と同じ動きを繰り返す姿は、さながら、居残りの愛。もっともっと強くなる準備だ。一方で、献身的なサポートを続けた母・美江さんの姿も印象に残る。送迎に加え、18ホールのプレーや、ホールアウト後の練習も遠くから見守った。今大会は連日、コースへ送り届けた後、近くの神社への参拝も欠かかさない。苦しい時の神頼みは、最後の最後で2冠をもたらしたといえよう。

 実は、うれしい予感も漂っていた。「今年、トーナメントの優勝でいただいた、副賞の車のナンバーが決まりました。これまでは、優勝した日時などを選んでいたけど、今回は賞金女王のこともある。相談して、1をお願いした。ただ、1は希望者が殺到するため、何か月も待つ、とメーカーさんからいわれたけど、つい数日前、奇跡的にとれました、と連絡が…。1番ですからね。とても縁起がいいと感じた」と明かす。

 必死に頂点を目指した鈴木。しかし、歩みを止めるわけにはいかない。「2018年は、開幕戦からプレッシャーを感じながら、プレーしなければなりません。それに立ち向かい、成績を残す。並大抵のことではないでしょう。本当は、練習は好きではない。ただ、練習をしなければうまくはなれない。TOTOジャパンクラシックで、世界との差を十分に感じた。まだまだです」。より、謙虚になった。日本には、鈴木愛がいる。

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