2020.1.9
鈴木愛~うぶだし・エピソード④
<Photo:Matt Roberts/Getty images>
幸運は突然、やってくる。しかし、そこに至るまでの努力を惜しんではならない。押しも押されもせぬLPGAの顔の1人となった今、運命の2014年を振り返った。プロ2年目のこのシーズン、QTランキングは51位。
シーズンがスタートしても、なかなか出場権を得られない。そこで待つより攻めろ、である。3月、会場へ足を運び、現地ウェイティングにわずかな望みをかけた。しかし、無情にも4試合で欠場者は皆無。初の出場はヤマハレディースオープン葛城だった。が、予選落ち。「試合会場で練習をできたことは、すごくためになった。徐々に練習量を増やした時ですからね」と話した。当時は、ほとんど無名。ちなみに、14年は3試合連続で予選落ちという散々のスタートだった。
開幕前、初めて海外で練習を行う。クラブ契約メーカーが企画したアメリカ、アリゾナキャンプへ参加。ここで強烈な一喝をお見舞いされている。「プロテストに合格してから、まったく練習をしていなかったわけではない。ひと通りのことはやっていましたよ。ただ、アリゾナのキャンプで担当の方から、自分に甘すぎる。それではいつまでたってもうまくはならない。叱られたわけではないけど、かなりきつい口調で注意を受けました。そこからですね。練習時間が増えてきたのは。よく考えてみると、以前は試合でラウンドが終わった後など、練習グリーンで他の選手とおしゃべりをすることが多い。本当に考えが甘かったと思います」。
とはいえ、結果がすぐに出たわけではなかった。継続は力。現地ウェイティングをしても、出場チャンスが巡ってこないジレンマは、夏場まで続く。「ショットの感触がずっといまひとつ。とにかく、練習をしなければならない。本気で夕方の5時、6時まで練習をするようになったのは、サマンサタバサ ガールズコレクション・レディーストーナメントです。でも、試合には出られなかったけど…。それから、CAT Ladiesも現地ウェイティングをしてもダメでした」と苦笑する。
だが、必死の努力は突然、報われる。当時、「これだというような、1Wがずっとみつからなかった。シャフトやヘッドの形状を変更しても、まったくダメ。だけど、ニトリレディスゴルフトーナメントで、新しい1Wをいただいて…。ピンさんのG30です。一気に調子が良くなった。もし、あのクラブがなかったら今頃、どうなっていただろうと本気で思います。運命の1本。感触をつかんで、2週後の日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯に優勝できたわけですからね」と話してくれた。
1%のひらめきで、99%の才能が一気に開花。ところが、そのプロセスには、可能性が1%でもあれば努力を怠らず、チャレンジする精神が見え隠れする。現地ウェイティングをしても叶わない。それでも、次へ向けて努力を続けた2014年。だからこそ、19年は大逆転で2度目の賞金女王を獲得できたのか。「いや、そうではない。応援してくださるファンと家族。それからスポンサーの皆さんの支えがあったからです」。どこまでも控えめである。
=つづく
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