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2023.6.18

山下美夢有 狙って勝った父の日V

<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 JLPGAツアー2023シーズン第16戦『ニチレイレディス』(賞金総額1億円、優勝賞金1800万円)大会最終日が6月18日、千葉県千葉市・袖ケ浦カンツリークラブ・新袖コース(6621ヤード/パー72)で行われ、山下美夢有が大会レコードタイの通算17アンダーで今季4勝目をあげた。また、JLPGAツアー通算10勝となり、宮里藍に続く史上2位の年少記録に。2位は通算14アンダーの岩井明愛が入り、通算12アンダーの3位タイは岩井千怜、佐久間朱莉だった。
(天候:曇り時々晴れ 気温:27.8℃ 風速:6.5m/s)
《グリーン=スティンプ:11 3/4フィート コンパクション:23.5mm》

 36分間の激白。これほど、自身を語った山下美夢有を見たことがなかった。節目のJLPGAツアー通算10勝目は最終日、最終組で岩井ツインズとの直接対決。姉妹が、「まったくスキがなかった」と、口を揃えるほどの完勝である。

 「岩井さん姉妹とは、飛距離が40ヤードは違う。でも、スタートホールのティーイングエリアに立った時から必ず、優勝する-。強い気持ちで奮い立った」という。RKB×三井松島レディスでは、その岩井姉妹と3人のプレーオフ。しかし、PO2ホール目で千怜がバーディーを奪い、逆転優勝を飾っている。もちろん、今回はリベンジの気持ちもあったことだろう。しかし、それ以上に、「父の日に優勝をプレゼントする。それが私にできる最大の恩返し」という、一大決心を秘めていた。

 事前に予想した展開は、「スコアの伸ばしあいになる。最低でも、3アンダーを上積みしなければ」。前半は1バーディーで、勝負は後半へ移った。岩井姉妹は超攻撃スタイルで猛追したものの、第2日までの4打のアドバンテージがモノをいう。持ち前のショットの精度でおぜん立てした10番=2メートル、13番=1メートルの数少ないチャンスを確実にゲット。女王のゴルフを見せつけた。

 まさに、完勝。ところが、表彰式では珍しく大粒の涙を流すシーンがクローズアップされた。「いろいろありました。そんなことを思い出して…。父は仕事を終え、帰宅するのが午後8時過ぎです。疲れているにもかかわらず、そこから欠かさずに練習場へついてきてくれた。しかも午前0時を回ることも…。ゴルフは個人競技でも、とてもひとりだけでは今日の勝利はなかった。父、母のサポート。それから家族や応援してくださる皆さんが支えてくれたものです」と明かしている。

 かつてない達成感と、感謝が涙に変化したのだ。それだけではない。この日もプレーを終えると、コースへ向けて深々と一礼。「高校生の時から、自分で考えてはじめました。コースを使わせていただいたわけですから、ありがとうございます-と心の中でいいます」と、礼をつくす。


<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 こんなこともあった。「ジュニアの頃、ミスショットをしてハウスキャディーさんにあたりちらしたことがあって…。その時、父からめちゃ怒られた。大泣きです。私の両親はゴルフの技術より、マナーや礼儀に厳しかった。反抗期の時は、ちょっとムカつくこともあったけど、冷静に考えると、そやなぁと思う。私がやったことは、あかんなぁ-でした」。

 ここまでプライベートの一面を語ることはなかった。その意味で、今回のVが自身にとっていかに価値があるかがわかる。

 そして、アピールポイントも具体的に言及。「パー5の第3打を皆さんに見てほしい。飛距離を伸ばすことより、技術の向上にこだわっている。粘って、チャンスが来たときにバーディーをとる。スイングは変えていない代わりに、100ヤード以内のショートゲームをより多く練習しています」と、ひと息入れて、「(通算10勝は)はやいなぁ。それと前半戦で4勝もはやい」と、満足そうに話した。

 ちなみに、成績にかかわらず、「帰り道は試合の反省をする。優勝でも…」。どんな時でも冷静で謙虚なのは、たゆまぬ努力と向上心の賜物だった。

(青木 政司)

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