大城さつき　仮面のゴルファー見参

＜Photo:Atsushi Tomura/Getty images＞

　プロ12年目の春がきた。今、大城さつきは故郷の沖縄で2021年の第1戦、ダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメントへ備え、調整を続けている。「なぜ、プロゴルファーになったのか。そんなことをごくたまに、自分自身へ問いかけることがある。正直にお答えすると、当の私がなぜだろうなぁ、と思います。唯一、言えることは、幼少時からダイキンをみて育ったからでしょう。ボランティアとしても参加したし、よく試合というよりも練習場で選手の皆さんの姿を拝見することが好きでした。当然ながら、テクニックがすごいと感じたし、それ以上に良かったのは気さくに話かけてくださったからでしょう」。

　ニューノーマルの時代。取材をする上で最も違うのは、オフの間でも選手との距離が近いことだ。今回は沖縄と東京でのリモート。モニターを通してではあるものの、やはり表情を拝見しながら行うのは素晴らしい。ちなみに、当の大城はリモート取材が初体験。「貴重な経験をさせていただいた」と、丁重なお礼の言葉でスタートした。やさしい人柄を表すように笑顔が絶えることがない。調整はうまくいっているようだ。

　昨年、意外なところで話題を集めた。謎のプロゴルファーと呼ばれたのは、ハット、サングラス、マスクで素顔をみせないスタイルが要因だ。「サングラスはプレー中、以前から愛用していた。そして、サンバイザー、キャップではなく、ハットが気に入ってかぶるように。その後、コロナ禍でマスクをしないといけなくなった。そこで、紫外線対策でつけている鼻まで隠れるフェイスガードを着用したら、全く素顔がわからない、と皆さんからいわれるようになって…。よく、息苦しくないかと聞かれるけど、以前から海外やオフの練習で行ってきたことです。プレーには影響がない」と、大まじめに話している。その上で、「皆さんへ素顔は見えなくても、いつも笑顔ですよ」と加えた。

　余談ながら、今月24日は月光仮面登場の記念日である。日本初の仮面ヒーローが誕生してから63年。「今年も仮面でいこうかなぁと思っている」という。さらに、「去年はずっと調子が悪くて、スイング修正ばかりを繰り返してきた。ようやく、調子が戻ってきたし20年、21年で1シーズンに統合されたことは私にはラッキー。チャンスを生かさなければなりません。だから、今年は1勝をあげることを大きな目標として掲げました」。

　17年賞金ランキング44位で初の賞金シードを獲得する。以来、3年連続で継続中。プロ入りしてからシード選手へなったのは10年が経っていた。「プロになりたいが最初の目標です。ただ、テストに合格してポーンと、すぐに試合に出られた。必死にやったという思い出はありません。たとえ、シードはダメでもQTがある。そんなところが、ちょっと甘かったなぁ。真剣に取り組んだのは2014年にQTで失敗してからです。このままではよくない。ゴルフだけではなく、体力アップのためのトレーニングを始めた。ここからですね。意識が変わってきたのは。そのあと、シードがとれたわけですからね。気がつくまでの時間が長かった」と、自戒の気持ちを込めて話す。

　キャリアは長い。記憶はないそうでも、2歳からクラブを握っていた。「まったく覚えていない。たまたま、ビデオに残っていたからわかった。最初は、パーシモンのヘッドを削り、シャフトを切って練習したらしい」。自身の記憶では、小学校3年生のときに出場した試合が鮮明だ。「初めて出た試合で、2位か3位だったと思う。とても楽しかった。あの楽しさは生涯忘れないでしょう」とほほ笑んだ。そうしたキャリアで、もっとも信頼しているのは58度。「得意というよりも、私のすべてがこのクラブです。たぶん、練習場で打っているボールの数の半分はこのクラブでしょう。調子が悪くなったら、58度で確認をする。本当に大好きですよ」ということで、ファンはぜひアプローチに注目を。

　この日も、しっかりとラウンドをした後で、充実した表情を浮かべていた。「練習場ではできることも、コースへ行くとできないことが多い。やはり、試合で確かめたい。ダイキンに備えて、何度も琉球ゴルフクラブをラウンドしました。取材でＺｏｏｍも体験できたし、良い1日。ありがとうございました。今年も仮面で行こうかなぁ、と思っている」。幾度となく、優勝争いは経験しているが、試合でヒロインになったことはない。仮面をサッと取り去って、ＪＬＰＧＡツアー初優勝のウイニングパットを決める。それも地元沖縄なら最高だろう。弥生に咲く、さつきもステキだ。

（メディア管理部・中山　亜子）